16歳の愛犬の様子がやはりおかしいと思ったら涙が止まらなくなった。
我が家の犬は誇り高い柴犬なのだ。
彼は16年もの間、我が家のセキュリティを完璧に守っていた。門の外を歩いている人には吠えないが門の外で立ち止まって敷地の中を伺うような気配も許さなかった。
しかし飼い主が「もういいよ」といえばそれ以上吠えることなく静かにしている犬であった。
もちろん柴犬特有のご主人順番というものがあり第一位は主人であったがお世話係の私であってもこちらの声掛けの意図は把握してくれる賢さがあった。
性格的にも一匹オオカミ的なところがあり犬同士で遊ぶことは出来なかった。
私達家族以外も寄せ付けず、かといって子どもの友達などは面倒くさそうではあったけれど相手をしていました。
マダラボケという言葉はご存じでしょうか?
我が家の犬はたぶんそうなんだと思う。
日中はいつもどうりの犬であるけれど暗くなるにしたがって徘徊をする。
キャン!と聞いたことがないような声で鳴くので慌てて見に行くと軽いロープが後ろ足に絡みついていた。ぐるぐると執拗にからまっている。外そうとすると痛いのか慌てているのかとても嫌がった。
このあたりからちょっとおかしい・・・と思っていた。
認知症の症状は1週間ごとに深刻さが増していった。
夜中に何回も散歩に行きたがる。排泄を夜中にして片付けてほしいと鳴く。ぐるぐる回ってはあちこちにぶつかる。そのうちにどうしてそんなところに?という場所に入っていた。
その場所とは部屋の隅、小屋の小窓の中に顔を入れる、小さな隙間にわざわざ顔をいれて困る。
認知症だとは聞いていた。
しかしこんなに早く症状は悪化するものなのかな?
確かクリスマスのときには夜は落ち着いていた。寝る場所を変え人間の近くにしたことで安心したのが大きいのかと私も安心していた。鳴くことはあったとしても一度、その時に散歩に行けばその後は静かにしていた。時間的には2時など真夜中が多かったけれど1度だけだった。
それが坂道を転がり落ちるように症状は悪化していった。
11時、12時、2時、3時、4時と散歩を要求するのだった。
主人と私で犬の要求をきいていたけどさすがに毎日だと気が休まらなかった。もちろん体も休まらないのですが気のほうが休まらなかった。
ある日「これはちょっとマズイな」と思ったのは眩暈を感じたからだ。以前メニエール病になったことがある私は深刻な状態になる前触れを知っている。ここは無理せず1日か2日休めは大事にならないはず。
夜中も鳴き声でご近所に迷惑をかけてはいけないと、少しの声でも自分が反応してしまうのでほぼ寝ていないのだと思う。
それでも犬は吠えるのをやめない。
抱きしめながら「鳴かないで、鳴かないで」と犬にいうものの興奮した犬は一晩中鳴く。
あんなに賢かった犬が年をとりこんなことになってしまうとは。
ぎゅっと抱きしめながら鳴かないでと言いながら人間の私は号泣していた。
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